朝、時間をかけて剃ったはずなのに、鏡を見ると口のまわりがうっすら青い。夕方、エレベーターの鏡で自分の顎を見て、剃り直したくなる。
深剃りを試した人も多いと思います。刃を新しくして、逆方向からも当てて、何度か往復させる。それでも青みは残り、代わりにヒリつきや赤みが出た——ここまで来ている人にとって、問題はもう「剃り残し」だけでは説明がつかなくなっています。
この記事では、剃刀がどこまで届いているのかというところから整理して、対策を方向ごとに分けます。
青ヒゲはなぜ剃っても青く見える?
剃刀が切っているのは、皮膚から出ている部分だけ
当たり前のようでいて、ここが出発点です。剃刀は皮膚の表面付近で毛を切ります。毛穴の中に続いている部分には刃が届かないので、そのまま残ります。
皮膚科のリファレンスである DermNet は、擬似毛包炎(いわゆる剃刀負け・ブツブツ)の項目で、剃った毛について「鋭い断面ができ、皮膚の表面を貫いて入り込むか、皮膚の表面より下に引き込まれて毛包の壁を破ることがある」と記述しています。引き込まれるという表現が示すとおり、剃った後も毛は皮膚の中に存在しています。
つまり「剃る」は、毛をなくす操作ではなく、皮膚から出ている分を切り落とす操作です。
剃刀が切るのは、ここまで
皮膚から出ている部分
皮膚の表面
刃が届かない
毛穴の中に続いている部分は、そのまま残る
皮膚の下に残った毛が、皮膚越しに見えている
青ヒゲは一般に、皮膚の下に残った濃い色の毛が、皮膚を通して暗く、青黒く見えている状態として説明されます。
ただし、ここは正確に書いておきます。青ヒゲの見え方そのものを直接測定・評価した研究は、調べた範囲では確認できませんでした。上の説明は、皮膚と色の見え方について分かっていることからの類推として語られているものだと理解しておくのが実態に近いと考えています。
補足:皮膚の深い位置にある色素が青みを帯びて見える現象自体は、皮膚科学では青色母斑(あざの一種)の色として扱われています。DermNet によれば、その仕組みの説明には複数の説があり、確定した一つの答えがあるわけではありません。
剃った直後の毛先は、平らな断面になっている
もう一つ、見落とされがちな要素があります。
メイヨー・クリニックは、剃ることで毛先が blunt tip(平らな断面)になり、「伸びてくる間、毛が目立ちやすく、濃く太く見えることがある」と説明しています。先の尖った毛が自然に伸びているときと、断面が上を向いているときとでは、同じ毛でも見え方が変わるということです。
あわせて、同じ記事はこうも書いています。剃ること自体は、毛の太さも色も伸びる速さも変えません。「剃ると濃くなる」という感覚は、この断面の影響と、伸びかけの時期の見え方によるものだと説明されています。
深剃りすれば青ヒゲは消える?
剃刀が届かない部分が残っているなら、もっと深く剃ればいい。自然な発想です。
限界のほうは単純で、刃が当たるのは皮膚の表面までです。どこまで丁寧に剃っても、毛穴の中に続いている分がなくなるわけではありません。
もう一つ、考えておいたほうがいいことがあります。剃刀負けやブツブツ(擬似毛包炎)を繰り返している人向けの予防策には、深く剃ることとは相性が悪い項目が含まれています。
DermNet は、擬似毛包炎の予防として次のような点を挙げています。
- 毛の流れに沿って剃り、逆方向には剃らない
- 同じ場所を2度剃らない(およそ1mmの無精ひげを残す)
- 切れる刃を使う
- 皮膚を引っ張らない
米国皮膚科学会(AAD)も、剃刀負けの予防として「逆剃りは刺激になる」と挙げています。
これらは、剃刀負けやブツブツを繰り返す人に向けて示されている予防策です。すべての人に当てはまる話ではありませんが、そうした症状を繰り返している人の場合、青みを薄くするために深く剃ることと、皮膚への刺激を減らすことが、両立しにくくなることがあります。どちらを優先するかは、いま何に困っているかによって変わります。
すでに赤みやブツブツ、ヒリつきが出ている場合は、症状そのものへの対応が別に必要になります。症状が出ている状態での対応と受診の目安は、髭剃り後の肌荒れ、今日どうする?症状別の応急ケアと受診の目安で分けて説明しています。
青ヒゲを目立たなくする方法
方向の違う3つを並べます。順位は付けません。どれが向いているかは、何に困っているかで変わるからです。
剃り方を見直す
日常の処理方法を見直す方向
一時的にカバーする
今日の見え方に対処する方向
ヒゲそのものを減らす
長期的に毛量を変える方向
剃り方を見直す
刺激を減らしながら、剃り残しを減らす方向です。前の節で挙げた4点——流れに沿って剃る、同じ場所を2度剃らない、切れる刃を使う、皮膚を引っ張らない——が手がかりになります。
このうち「同じ場所を2度剃らない」は、青ヒゲを気にしている人ほど守りにくい項目です。青く見える箇所にもう一度刃を当てたくなるのは自然な反応ですが、同じ場所を繰り返し剃ることは、DermNet が擬似毛包炎の予防で避ける項目として挙げているものです。
蒸らしてから剃る、剃る前後の保湿といった日常の手順は、ひげ剃り後の肌荒れ対策!スキンケアとシェービングの基本コツにまとめています。
一時的に目立たなくする
今日これから人に会う、という場面で効くのはこちらです。メンズ用のコンシーラーやBBクリーム、カラーコントロール下地といった、肌色に寄せる方法があります。
この記事では具体的な商品は挙げません。肌の色との相性が強く出る領域で、他人の順位がそのまま自分に当てはまらないためです。
押さえておきたいのは、これは見え方への対処であって、毛そのものには何も起きていないということです。翌朝には元に戻ります。それでいい場面と、それでは足りない場面があります。
ヒゲそのものを減らす方法を検討する
皮膚の中に残る毛の量そのものを変える方向です。家庭用光美容器(家庭用脱毛器)と、医療機関で受けるヒゲ脱毛があります。
この記事では、どちらが優れているかは決めません。条件によって残る選択肢が変わるためです。検討に入る前に知っておいたほうがいいことを、3点だけ挙げます。
1つ目は、厚生労働省の通知が直接示している範囲。レーザーなどの強い光を毛根部分に照射して毛乳頭等を破壊する行為について、厚生労働省の通知(医政医発第105号、2001年)は「用いる機器が医療用であるか否かを問わず」医師が行うのでなければ医師法第17条に違反する、としています。
2つ目は、「永久減毛」が毛ゼロを意味する言葉ではないということ。米国FDAの審査文書(510(k) K180353)は、permanent hair reduction を「施術完了後6・9・12か月の時点で測定した、再生してくる毛の本数の長期的かつ安定的な減少」と定義しています。定義されているのは本数の減少で、毛がなくなることを指す定義ではない、というのが当サイトの読み方です。
3つ目は、青ヒゲの見た目そのものを評価した研究が見つからなかったということ。ヒゲを対象にした脱毛の研究は存在しますが、青ヒゲの見た目の改善を主要な評価項目にした研究は、調べた範囲では確認できませんでした。今回確認した範囲では、脱毛によって青ヒゲの見た目がどの程度変わるかを数字で示せる根拠は確認できませんでした。
剃り方・機器・脱毛という3つの手段をどう切り分けるかは、髭剃りの肌荒れを止める3つの選択肢|剃り方・シェーバー・脱毛の判断基準で整理しています。回数や痛み、受ける前に知っておくことはひげ脱毛を始める前に知っておきたいこと、家庭用と医療の費用の出方を並べて見たいなら家庭用脱毛器と医療ヒゲ脱毛はどちらが安い?3年間の総費用で比較が対応します。
自分の場合はどの対策を考える?
青ヒゲとひとことで言っても、困っている中身は人によって違います。いま何が気になっているかで、考える方向が変わります。
| いま気になっていること | 次に考えること |
|---|---|
| 剃り残しが目立つ気がする | 剃る手順と刃の状態。剃り方を見直す方向 |
| 深剃りすると赤みやヒリつきが出る | 刺激の量と剃り方のバランス。青みより先に皮膚の状態 |
| すでにブツブツや赤みが出ている | 青みの対策より先に、いま出ている症状への対応 |
| 今日これから人に会う | 見え方への一時的なカバー |
| 剃り方を変えても変わらない | 皮膚の中に残る毛の量そのもの。ヒゲを減らす方向の検討 |
| 長期的にヒゲの量を減らしたい | 手段ごとの条件と、続けられるかどうか |
この表は、対策の優劣を示すものではありません。上の行ほど良い、という並びでもありません。困っていることが複数の行にまたがることもあります。その場合、皮膚の症状が出ている行があれば、そちらを先に扱ったほうが判断しやすくなります。
まとめ
剃刀が切れるのは皮膚から出ている部分までで、その下に続く毛は残ります。青ヒゲはその毛が皮膚越しに見えている状態として説明されますが、見え方そのものを直接評価した研究は確認できませんでした。
深く剃れば解決するとは限りません。剃刀負けやブツブツを繰り返している人の場合、深く剃ることと刺激を減らすことが両立しにくくなることがあります。
対策は、剃り方を見直す・一時的にカバーする・ヒゲの量そのものを減らす、の3方向。どれが正解かは、いま何に困っているかによって変わります。
ヒゲを減らす方向を検討するなら、まず自分の条件でどの選択肢が残るのかを確かめるところからになります。