髪の悩み

40代男性の白髪はなぜ増える?抜くと増えるのか、黒く戻るのか

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鏡で白髪を確認する40代男性

洗面所の鏡で、こめかみに白いものを見つける。気になって頭頂部を覗き込むと、そこにも何本かある。前からあったはずなのに、ここ一年で急に増えた気がする——40代に入ってから、そう感じている人は少なくないはずです。

白髪について調べ始めると、説明はいくらでも出てきます。年齢、ストレス、栄養不足、タバコ。抜くと増えるという話もあれば、それは言い伝えだという話もある。食べ物で黒髪に戻った、戻る確率は何割、といった断定も並んでいます。どれも自信たっぷりなので、かえってどれを信じればいいのか分からなくなります。

髪が白くなるときに体の中で何が起きているのか、ストレスや喫煙とどう関係するのか、抜くとどうなるのか、そして黒く戻ることはあるのか。はっきり分かっていることと、まだ分かっていないことを分けながら、順に見ていきます。

白髪は何歳ごろから、どのくらい増えるのか

年齢とともに白髪が増えることは、改めて言うまでもないように思えます。では「何歳で、どのくらい」なのか。意外にも、この問いに答えた調査は多くありません。

規模の大きいものとして、世界各地の健常な男女4,192人の髪色を、標準の毛束と見比べて評価した調査があります。45歳から65歳の年齢層では74%の人に白髪があり、頭髪のうち白い部分は平均して27%。男性のほうが女性より白髪が多いという差も出ています。

同じ調査には、もうひとつ興味を引く結果があります。「50歳になれば半分の人が半分白髪になる」という言い方を聞いたことがあるかもしれません。実際に50歳時点で頭髪の半分以上が白い人の割合を計算すると、6%から23%でした。言われているほど一気に進むわけではないようです。

ただ、この数字を自分に当てはめるには注意が必要です。45歳から65歳をひとまとめにした値なので、40代だけを取り出すことはできません。さらに同じ調査は、白髪が出始める年齢も進み方も、民族や地域によってはっきり違うと報告しています。アジア系とアフリカ系の人は、同年齢のコーカサス系の人より白髪が少なかった。74%という数字を、そのまま日本人の40代男性に読み替えることはできません。この調査を行ったのが化粧品会社の研究者であることも、頭に置いておいていい点です。

日本人の男性について、年齢ごとの白髪の割合を示したデータは見当たりません。言えるのは、年齢と白髪の広がりに関係があると報告されていること、男性のほうが多いという報告があること、そして進み方には個人差と集団差の両方があるということです。

髪が白くなるとき、髪の中では何が起きているのか

ここは、かなりはっきり分かっている部分です。

髪は頭皮の下にある毛根で作られ、押し出されるように伸びていきます。色は毛根の底で、色素をつくる細胞が供給しています。毛は一定期間伸びると抜け落ち、同じ毛穴で次の毛が作られる。そのサイクルごとに、色素をつくる細胞を新しく送り出す仕組みが毛根の中に備わっているわけです。

色素細胞に目印をつけたマウスと、年齢を重ねた人の毛根の両方を調べた研究が、白髪の正体を示しました。白髪になるのは、この「色素をつくる細胞を供給し続ける仕組み」が、毛根の中で保たれなくなるからです。供給元が維持できなくなった毛穴からは、色のつかない毛が伸びてきます。

ここで押さえておきたいのは、髪の色は毛が作られて伸びていく、その時点で決まるということです。多くの白髪は、新しく伸びる部分に色素が入らなくなった結果として現れます。一方で、1本の毛が伸びている途中で色素の入り方が変わり、同じ毛の中に色の違う区間が帯のように残っていた例も確認されています。これについては「一度白くなった髪が、黒く戻ることはあるのか」で改めて触れます。

もっとも、仕組みが分かっていることと、あなたの白髪が何によってそうなったのかが分かることは別です。個々の原因を言い当てるところまでは進んでいません。

黒髪・白髪・まれな再色素化の仕組みを示した図
髪が白くなる仕組みと、まれに観察される再色素化のイメージ

白髪は黒髪と、生え方や太さが違うのか

白髪を見つけたとき、「やけに目につく」と感じたことはないでしょうか。1本だけ妙にピンと立っている、短い期間でずいぶん増えたように見える。

これには、髪そのものの性質が関わっている可能性があります。人の頭髪と眉毛を調べた研究で、白髪は黒髪より太く、伸びる速度も速いことが分かりました。毛の成長に関わるタンパクの出方も、白髪のほうで強かったと報告されています。

太さと伸びる速さの違いが、白髪を目につきやすく感じることと関係している可能性はあります。ただし、この研究が測ったのは毛の太さと成長の速さで、「白髪が目立って見えるか」を確かめたものではありません。「急に増えた気がする」理由がここにある、と言える段階ではなく、考えられる説明のひとつにとどまります。

白髪が太いことは、髪の量とは関係がありません。薄毛について何から考えるかは、別の論点になります。

ストレスで白髪は増えるのか

白髪とストレスは、最も結びつけて語られる組み合わせでしょう。

毛髪1本ずつについて、長さ方向に色の濃さを測り、数値として並べる方法を開発した研究があります。髪は一定の速さで伸びるので、根元から先端までを辿れば、色が変わった時期をおおよそ時間に置き換えられるという考え方です。白髪が混じっていると自己申告した14人から397本の毛を集めて調べました。

その中に、色の変わり目の時期と、本人が後から振り返って挙げたストレスの時期が重なった例がありました。興味を引く観察です。ただし、この照らし合わせを行ったのは14人全員ではなく、特徴的なパターンが出た2人(男性1人と女性1人)だけ。しかも毛を採取してから1〜4か月経ったあとに、過去の出来事を思い出して答えてもらう形で調べています。

別の角度からの報告もあります。エジプトで30歳より前に白髪が出た人300人と、そうでない人300人を比べた調査では、家族歴、座っている時間が長い生活、ストレスの自覚との間に関連が出ました。ただしこれは、ある時点で白髪とストレスの両方を一度に測った調査です。ストレスがあって白髪が増えたのか、白髪が気になってストレスを感じているのか、順番は分かりません。

ストレスと白髪に何らかの関係がありそうだという報告は確かにある。けれども「ストレスが白髪を作る」と言える段階ではなく、ましてや「ストレスを減らせば白髪が戻る」という話は、これらの研究からは出てきません。

一度白くなった髪が、黒く戻ることはあるのか

この問いには、はっきりした答えがあります。そして、その答えは「戻せる」ではありません。

さきほどの毛髪の色を数値化した研究で、白くなっていた部分が根元側で色を取り戻している毛が見つかりました。頭髪だけでなく、ひげや体毛でも観察され、性別や年齢、人種をまたいで確認されています。白髪が自然に色を戻すことがある——これはヒトで実際に起きた現象です。

ただし、研究者自身が付けた但し書きのほうが重要かもしれません。この研究チームは、2年半かけて募集を続けて、該当する人を14人しか見つけられなかったと書いています。そして、この現象は頭全体に起こるのではなくごく少数の孤立した毛に限られること、多くの場合は気づかれずに過ぎてしまうため、実際にどのくらいの頻度で起きるのかを評価することは難しいとも述べています。

では、意図的に戻す方法はあるのか。薬を使った人で白髪が黒くなったという報告を集めて精査したレビューがあります。27件の報告が見つかりましたが、そのうち白髪を黒く戻すこと自体を目的にしていた研究は6件だけで、残りは別の病気の治療中に偶然気づかれたものでした。このレビューの結論は明快です。現時点で、白髪を黒く戻すために確立した医療的な方法はありません。

自然に色を取り戻した毛はヒトで観察されている。しかし非常にまれで、どのくらいの確率で起きるかは分からず、狙って起こす方法も見つかっていない。「戻ることがある」と「戻せる」の間には、相当な距離があります。

白髪を抜くと増えるのか

これは、白髪について最もよく交わされる問いでしょう。抜くと増えるから抜かないほうがいいという話も、それは根拠のない言い伝えだという話も、どちらもよく見かけます。

ところが、白髪を抜いたあとに本数が増えるかどうかを人で直接比較した研究は、見当たりません。あるのは、毛を抜いたあとの毛根で細胞がどう振る舞うかを調べた基礎的な研究です。

近いところにある研究をひとつ挙げるなら、マウスの毛を抜いた実験があります。抜いたあと、色素をつくる細胞のもとが活動を始め、毛と皮膚の色がむしろ濃くなる方向の変化が起きました。ただしこれはマウスの実験であり、人の白髪に当てはめることはできません。人の頭で同じことが起きるかどうかは、この研究からは分かりません。

抜いたときに白髪が増えるのか増えないのかは、人で確かめた研究がないため、どちらとも言い切れません。抜いてよいかどうかについても研究が答えを出しているわけではないので、ここで勧めることはしません。はっきりした答えがないのは物足りないでしょうが、根拠のない断定を受け取るよりは、分かっていないと知っておくほうが役に立つはずです。

喫煙や生活習慣は、白髪の早さと関係するのか

生活習慣との関係を調べた研究はいくつかありますが、読み方に癖があります。この領域の研究は、ほとんどが「30歳より前に白髪が出た人」を対象にしているのです。加齢で増える白髪ではなく、早く白髪が出たケースを調べたもの。40代の白髪がどう進むかを直接扱った研究ではありません。

その前提で見ていくと、最も安定して出てくるのは家族歴です。韓国の30歳未満の男性6,390人を対象にした調査では、30歳より前に白髪が出た人が25.3%で、家族に同じ人がいることとの関連が他の要因より際立って強く出ました。肥満との関連、そして5パックイヤーを超える喫煙歴との関連も報告されています。ヨルダンの207人の調査でも、喫煙する人は白髪が出る時期が数年早く、調整後も2.5倍という値が出ました。

ところが、同じ喫煙について逆の結果もあります。米国で467人を調べた調査では、喫煙歴は逆方向の関連を示しました。エジプトの600人の調査では、喫煙とも体格指数とも関連が出ていません。向きが揃っていないのです。しかもこれらはいずれも、ある時点で白髪と生活習慣を同時に測った調査なので、喫煙が先なのか別の共通要因があるのかは区別できません。

喫煙と白髪の関係は、今ある研究だけでは一方向にまとめられません。体格や代謝の指標についても、関連を報告した研究と関連がなかった研究の両方があります。一方で家族歴との関連は複数の調査で共通しており、白髪の出方には自分でどうにかできる範囲の外にある部分が大きいようです。

食べ物やサプリで白髪は変わるのか

「白髪を黒く戻す食べ物」「白髪に効くサプリ」。検索するとよく出てくる話題です。

栄養状態と白髪の関連を調べた研究は、確かにあります。30歳より前に白髪が出た人とそうでない人の血液を比べたもので、米国の467人の調査では鉄が足りていないことと関連が出ました。エジプトの600人の調査でも、鉄の蓄えを示す指標が低いことと関連がありました。一方で同じ調査では、ビタミンDについては両群に差がありません。調べた項目によって結果は分かれます。

ここが肝心です。これらは血液の状態を比べた研究であって、何かを摂ったら白髪が改善したかを確かめたものではありません。関連があることと、摂れば変わることは、別の話です。

では、摂って確かめた研究はあるのか。白髪を対象にした比較試験は1件あります。クズ由来の成分を含む外用剤を女性44人に24週間使ってもらい、プラセボと比べた試験です。新しく生えてきた白髪の本数には差が出ましたが、医師による評価と本人による評価では、髪全体の白さの見え方に差は出ませんでした。塗るものであって飲むものではなく、化粧品会社との研究契約による資金提供を受けた試験でもあります。薬による白髪の黒化を集めたレビューも、ビタミンB群の補充が白髪を黒くしうるという根拠については質が低いと評価しています。

飲んで白髪を黒く戻せたことを人で確かめた試験は、見当たりません。食事や栄養を整えることには白髪とは別の意味がありますが、「これを摂れば白髪が戻る」という言い方を支える研究は、今のところないということになります。

染めるか、染めないかを決める前に

白髪が増えてくると、どこかで「染めるかどうか」を考えることになります。

参考になる調査があります。白髪のある韓国の620人(男性330人、女性290人)に質問票と診察を行ったもので、43.9%の人が髪を染めていました。女性のほうが染める割合が高く、年代では50代から60代が最も多い。そして、白髪が頭髪全体の2割を超えたと自分で感じている人は、染めている割合が明らかに高くなっていました。目立ってきたと感じた段階で手を打つ人が多い、という傾向が読み取れます。

この調査では、髪を染めていることと、脱毛や頭皮の病気の多さとの間に関連は見られませんでした。白髪染めを続けると髪が薄くなるのではないか、という不安を持つ人にはひとつの手がかりになります。ただし、これは安全性を確かめるために組まれた試験ではなく、ある時点で聞き取りと診察を行った調査です。この結果だけで「染めても問題ない」と結論づけられるものではありません。

染めるか染めないかは、ここまでに見てきた研究から医学的に決まる問題ではありません。白髪があること自体は、多くの場合、加齢に伴う変化です。どう見せたいか、手間をかけ続けられるか、職場や生活の場でどう受け取られたいか——判断の軸はそのあたりにあります。髪以外の部分も含めて全体の印象を整える順番から考えると、優先順位は見えやすくなるはずです。

まとめ

年齢と白髪の広がりに関係があることは、世界各地を対象にした調査が報告しています。男性のほうが多いという結果も、同じ調査から出ています。ただし「日本人の40代男性なら何%」を示せるデータはありません。進み方には民族差も個人差もあるため、その調査の数字を自分に当てはめても、あまり意味はありません。

仕組みのほうは、かなり分かっています。毛根の中で、髪に色をつける細胞を供給し続ける仕組みが保たれなくなる。毛が作られて伸びる過程で色素が十分に入らなくなり、白髪になります。白髪は黒髪より太く伸びるのも速いという報告もあり、「急に増えた」という感覚の一部は、本数よりも1本あたりの目立ちやすさから来ているのかもしれません。

分かっていないことも少なくありません。白くなった毛が自然に色を取り戻した例はヒトで観察されていますが、非常にまれで、ごく少数の毛に限られ、頻度も分かっていません。黒く戻す確立した方法は、今のところありません。抜くと増えるのか増えないのかも、人で直接数えた研究が見つからず、どちらとも言えません。ストレス、喫煙、栄養は関連を報告した研究がある一方、向きが揃わない研究や関連が出なかった研究もあり、単純な原因として整理できる段階にありません。共通して出ているのは、家族歴との関連です。

白髪は、多くの場合、年齢とともにみられる変化のひとつです。今ある研究から言えるのは、「これをすれば戻る」という方法はまだないということ、そして自分で変えられる要因だけで白髪の出方を説明することはできないということ。そのうえで染めるか染めないかを選ぶのは、医学的な判断ではなく、自分がどう見せたいかという選択になります。

参考にした研究

このページは、次の12件の研究をもとにしています。いずれも査読を経た論文です。企業に所属する著者が含まれるもの、企業から資金提供を受けたものには、その旨を添えました。

Nishimura EK, Granter SR, Fisher DE. Mechanisms of hair graying: incomplete melanocyte stem cell maintenance in the niche. Science. 2005;307(5710):720-724.(マウスと加齢したヒト毛根/ハーバード大学ほか)PMID 15618488

Panhard S, Lozano I, Loussouarn G. Greying of the human hair: a worldwide survey, revisiting the ’50’ rule of thumb. Br J Dermatol. 2012;167(4):865-873.(世界4,192名/著者所属はロレアル)PMID 22716034

Rosenberg AM, Rausser S, Ren J, Mosharov EV, Sturm G, Ogden RT, et al. Quantitative mapping of human hair greying and reversal in relation to life stress. Elife. 2021;10:e67437.(14名・毛髪397本/コロンビア大学ほか)PMID 34155974

Shin H, Ryu HH, Yoon J, Jo S, Jang S, Choi M, Kwon O, Jo SJ. Association of premature hair graying with family history, smoking, and obesity: a cross-sectional study. J Am Acad Dermatol. 2015;72(2):321-327.(韓国・30歳未満の男性6,390名/ソウル大学ほか)PMID 25484268

Zayed AA, Shahait AA, Ayoub MN, Yousef AM. Smokers’ hair: Does smoking cause premature hair graying? Indian Dermatol Online J. 2013;4(2):90-92.(ヨルダン・207名/ヨルダン大学)PMID 23741662

Thompson KG, Marchitto MC, Ly BCK, Chien AL. Evaluation of Physiological, Psychological, and Lifestyle Factors Associated with Premature Hair Graying. Int J Trichology. 2019;11(4):153-158.(米国・467名/ジョンズ・ホプキンス大学)PMID 31523106

El-Husseiny R, Alrgig NT, Abdel Fattah NSA. Epidemiological and biochemical factors (serum ferritin and vitamin D) associated with premature hair graying in Egyptian population. J Cosmet Dermatol. 2021;20(6):1860-1866.(エジプト・600名/アインシャムス大学)PMID 33001544

Yale K, Juhasz M, Atanaskova Mesinkovska N. Medication-Induced Repigmentation of Gray Hair: A Systematic Review. Skin Appendage Disord. 2020;6(1):1-10.(27件を精査したシステマティックレビュー/カリフォルニア大学アーバイン校)PMID 32021854

Jo SJ, Shin H, Park YW, Paik SH, Park WS, Jeong YS, Shin HJ, Kwon O. Efficacy and Safety of Pueraria lobata Extract in Gray Hair Prevention: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study. Ann Dermatol. 2013;25(2):218-222.(女性44名・外用剤/ソウル大学。アモーレパシフィックとの研究契約による資金提供)PMID 23717015

Jo SJ, Paik SH, Choi JW, Lee JH, Cho S, Kim KH, Kwon O. The pattern of hair dyeing in Koreans with gray hair. Ann Dermatol. 2013;25(4):401-404.(韓国・620名/ソウル大学)PMID 24371384

Choi HI, Choi GI, Kim EK, Choi YJ, Sohn KC, Lee Y, et al. Hair greying is associated with active hair growth. Br J Dermatol. 2011;165(6):1183-1189.(ヒトの頭髪と眉毛/忠南大学)PMID 21916889

Li H, Fan L, Zhu S, Shin MK, Lu F, Qu J, Hou L. Epilation induces hair and skin pigmentation through an EDN3/EDNRB-dependent regenerative response of melanocyte stem cells. Sci Rep. 2017;7(1):7272.(マウス/温州医科大学ほか。著者1名がメルク研究所に所属)PMID 28779103

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