髪の悩み

育毛剤・市販の発毛剤・処方薬は何が違う?法令上の要件と、条件の確かめ方

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机の上に置かれたスプレーボトル、箱、錠剤の瓶、水の入ったグラス、書類とPTPシート

ドラッグストアの棚に「育毛剤」と「発毛剤」が並んでいて、スマホには「AGA治療」の広告が出てくる。どれも薄毛に関係する話なのに、値段も、買える場所も、書いてあることの硬さもばらばらです。同じ棚の延長線上にあるように見えて、実は制度上まったく別のものを眺めている、ということが起こります。

この記事は、どれが一番効くかを決める記事ではありません。順位もつけません。

答えるのは2つだけです。販売や処方の場面に、法令上どんな要件があるのか。そして、使えない条件や注意事項は、何で確認できるのか。この2つが分かると、自分でどこまで確かめられて、どこから先は誰かに聞くことになるのかが見えてきます。

3つは「同じ薄毛対策」ではない

法律上の区分が違う

この記事で並べるのは、次の3つです。

  • 医薬部外品(育毛剤として売られていることが多いもの)
  • 第1類医薬品(市販の発毛剤。ミノキシジルの外用剤)
  • 処方箋医薬品(医師の処方による治療)

商品名ではなく、制度上の区分で分けています。どの区分にあたるかは製品ごとに決まっているので、手に取ろうとしているものがどれなのかは、製品の表示で確かめることになります。

区分が違うと、何が変わるのか。市販の発毛剤を例にすると、その添付文書は効能・効果を「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」と書き、あわせて「本剤は壮年性脱毛症でのみ有効です」と明記しています。つまり、何に対する製品なのかが文書で限定されている。

処方薬の側も同じで、フィナステリド製剤の添付文書は規制区分を処方箋医薬品とし、効能又は効果を「男性における男性型脱毛症の進行遅延」としています。女性および小児等に対する適応はなく、20歳未満での安全性・有効性は確立されていない、とも書かれています。

この記事では、どちらがよく効くかは扱いません。扱うのは、販売や処方の場面にどんな要件があるのかと、何を見れば条件を確認できるのかです。

この記事で自毛植毛とスカルプケアを扱わない理由

自毛植毛を4つ目として並べていないのは、位置づけが違うからです。日本皮膚科学会のガイドラインは、植毛術(自毛)について「フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用による効果が十分でない症例に対して、他に手段がない状況において、十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り」推奨する、としています。前の手段を試したあとに、条件つきで出てくるものを、入り口の3つと同じ列に置くと、読み方を誤ります。

シャンプーやトリートメントなどのスカルプケア用品も、この記事には入れていません。頭皮をどう洗うかという話と、薄毛に対してどの区分のものを使うかという話は、確認すべき文書も、関わる人も違います。

販売・授与に、法令上どんな要件があるか

同じように手に入るように見えても、販売や処方の場面で確認できる法令上の要件は、3つで異なります。

確認できる内容の種類も、3つでそろってはいません。医薬部外品については販売・授与の許可について、第1類医薬品については薬剤師による販売と情報提供について、処方箋医薬品については処方箋による販売の制限について、それぞれ別の資料が述べています。同じ物差しで並べたものではない、という前提で読んでください。

医薬部外品の場合

東京都健康安全研究センターの資料は、医薬部外品について「既に医薬部外品製造販売業者により市場へ出荷された製品を流通させる場合、販売・授与に係わる許可は必要ありません」と説明しています。ただし条件もついていて、製造販売業者が出荷していない製品を流通させることや、出荷された製品に製造行為(ラベルの変更を含む)を加えることはできない、とあります。

一方で、市場へ出荷する側は別です。同じ資料は、国内製造でも輸入でも、自ら市場へ出荷するには医薬部外品製造販売業許可を取得し、その品目が製造販売承認を受けている必要がある、と書いています。

ここで注意していただきたいことがあります。この資料が説明しているのは「許可」の要否です。薬剤師や登録販売者といった専門家の関与が販売の要件になっているかどうかについては、この資料は触れていません。このページでは、そこまでは確認できていません。

第1類医薬品(市販の発毛剤)の場合

厚生労働省と医薬品医療機器総合機構の資料は、第1類医薬品について、薬剤師が販売し、薬剤師による情報提供が行われる、と説明しています。インターネット販売でも同じで、販売のときには年齢、症状、副作用歴、持病、医療機関の受診の有無などを確認する、とされています。

通販だから何も聞かれない、ということにはなっていない、という点がここの要点です。

処方箋医薬品(医師の処方による治療)の場合

厚生労働省の通知は、処方箋医薬品について、法第49条第1項が「医師等からの処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、販売を行ってはならない」と規定していると記載しています。通知は、その「正当な理由」にあたる場合も列挙しています。

先に挙げたフィナステリド製剤の添付文書も、規制区分を処方箋医薬品とし、医師等の処方箋により使用することとしています。

使えない条件・注意事項は、何で確認するか

自分に使えるかどうかを確かめるとき、読む文書と、関わる人が3つとも違います。

医薬部外品・第1類医薬品・処方箋医薬品について、条件確認に使うものの違いを示した図。医薬部外品は製品ごとの表示、第1類医薬品は添付文書と薬剤師、処方箋医薬品は添付文書と診療。

医薬部外品は、製品ごとの表示

東京都の資料は、医薬部外品について、用法・用量その他使用及び取扱上の必要な注意を、添付する文書またはその容器・被包に記載することとされている、と説明しています(法第60条で準用する第52条第2項)。

つまり、確認するのはその製品そのものです。製品ごとに書かれているので、別の製品の表示を読んでも、手元の製品の注意事項は分かりません。

市販の発毛剤は、添付文書と薬剤師

市販の発毛剤には添付文書があり、そこに2種類の記載があります。

「してはいけないこと」には、本剤の成分でアレルギー症状を起こしたことのある人、女性、未成年者(20歳未満)、壮年性脱毛症以外の脱毛症の人・原因不明の脱毛症の人、脱毛が急激または斑状に抜けている人が挙げられています。

「相談すること」には、薬や化粧品でアレルギー症状を起こしたことのある人、高血圧・低血圧の人、心臓または腎臓に障害のある人、むくみのある人、家族に壮年性脱毛症がない人、甲状腺機能障害の診断を受けた人、高齢者(65歳以上)が挙げられています。

2つは性質が違います。前者は添付文書が使わないよう求めている状態で、後者は相談したうえで判断する、と書かれている状態です。どちらも、このページが代わりに判定するものではありません。先に書いたとおり、第1類医薬品は販売のときに薬剤師が関わり、年齢や持病などを確認する仕組みになっています。

使い方についても添付文書に書かれていて、成人男性が1日2回、1回1mLを脱毛している頭皮に塗布する用法とされ、「少なくとも4ヵ月間」使用すること、「6ヵ月間使用して改善が認められない場合は、使用を中止し、医師又は薬剤師に相談」することが記載されています。

添付文書のどこを見るか、2つの区分がどう違うかは、添付文書の「してはいけないこと」「相談すること」の読み方で整理しています。

処方薬は、添付文書と診療

処方薬にも添付文書があり、規制区分や効能・効果、適応の範囲が書かれています。フィナステリド製剤の添付文書には、女性および小児等に対する適応がないこと、20歳未満での安全性・有効性が確立されていないことが記載されています。

ただし、処方薬の場合は読む人が自分だけではありません。日本皮膚科学会のガイドラインは、男性型脱毛症の診断について、問診により家族歴や脱毛の経過を聴き、視診により生え際の後退や毛髪の変化を確認して行うとし、拡大鏡やダーモスコピーの使用も診断の手助けになると書いています。

同じガイドラインは、円形脱毛症の亜型、全身性疾患に伴う脱毛、貧血や急激なダイエットなど消耗性疾患に伴う脱毛、薬剤による脱毛などを「除外することが大切である」とも述べています。つまり、何が起きているのかを確かめる工程そのものが、診療の中にあります。

診療で何が確認されるとされているのか、受診の前に自分で整理しておけることは何かは、男性型脱毛症の診療で確認されることで整理しています。

3つの違いを並べて見る

医薬部外品
(育毛剤として売られていることが多いもの)
第1類医薬品
(市販の発毛剤・ミノキシジル外用)
処方箋医薬品
(医師の処方による治療)
販売・授与に、法令上どんな要件があるか出荷済み製品の流通では、販売・授与に係る許可は不要とされています薬剤師が販売し、情報提供・確認を行います原則として、医師等の処方箋を受けた人に販売されます
使えない条件・注意事項は、何で確認するか製品ごとの表示添付文書+薬剤師添付文書+診療

この表は、どれが優れているかを示すものではありません。左から右に向かって良くなる、という並びでもありません。

また、上の行は販売や処方の場面に法令上どんな要件があるかを並べたものです。買う側の条件や、買える場所を示すものではありません。3つで確認できている内容の種類もそろっていません。育毛剤について、薬剤師や登録販売者の関与が必要ないかどうかまでは、このページでは確認していません。

自分に使えるかどうかは、この表ではなく、製品ごとの表示・添付文書・薬剤師・医師のそれぞれで確認することになります。

この記事で比べていないこと

「結局どれが効くのか」が書かれていないことに、物足りなさを感じた方もいると思います。意図的に外しています。理由を並べます。

効果の大きさ・効きやすさ。3つは作用する対象も、対象として想定されている状態も異なります。同じものさしで測った資料を確認できていないので、並べると比較に見えてしまうものを置いていません。

おすすめ度・人気・口コミ評価・売れ筋・満足度。これらは、何人のうち何人なのかという分母や、どう集計したのかが示されていないことが多く、PMCでは比較軸に使いません。

ガイドラインの推奨度。日本皮膚科学会のガイドラインでは、治療法ごとに推奨度が設定されています。ただし、これは読者個人に対する選択肢の順位ではありません。そのため、このページでは推奨度を3つの手段のランキングとして表示しません。

費用。3つを同じ条件で比べられる単位(期間、数量、何が含まれるか)を確認できていません。

効果判定までの時間と継続期間。市販の発毛剤については、添付文書に「少なくとも4ヵ月間」「6ヵ月間使用して改善が認められない場合は、使用を中止し、医師又は薬剤師に相談」という記載があります。ただし、医薬部外品と処方薬について、同じように比べられる一次情報を確認できていないため、3つを並べる軸にはしていません。

自分がどの範囲にいるかを確かめる

3つの違いが分かっても、「で、自分の場合はどうなるのか」は別の問いです。

抜け方によっては、添付文書が市販の発毛剤を使わないよう求めている状態に当てはまることがあります。医師の診療を受ける選択肢があるかどうかでも、決まり方が変わります。

まとめ

  • 育毛剤として売られているもの、市販の発毛剤、医師の処方による治療は、制度上の区分が違います。商品の良し悪しの前に、ここが違います
  • 販売や処方の場面で確認できる法令上の要件が違います。出荷済みの医薬部外品を流通させるのに販売・授与の許可は必要ないと説明されている一方、第1類医薬品は薬剤師が販売して情報提供を行い、処方箋医薬品は処方箋の交付を受けた者以外には正当な理由なく販売できないと規定されています
  • 条件を確認するのに使うものが違います。医薬部外品は製品ごとの表示、市販の発毛剤は添付文書と薬剤師、処方薬は添付文書と診療です
  • このページは、どれが優れているかを決めるものでも、あなたに使えるかどうかを判定するものでもありません。何で確認できるかを示すところまでです

参考にした資料

  • リアップX5 添付文書(大正製薬株式会社)/医薬品医療機器総合機構 一般用医薬品 添付文書情報
  • プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg 添付文書(医薬品医療機器総合機構)
  • 厚生労働省/医薬品医療機器総合機構「一般用医薬品:適切なルールの下、全てネット販売可能」
  • 厚生労働省医薬食品局長通知「薬局医薬品の取扱いについて」(薬食発0318第4号、平成26年3月18日)
  • 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
  • 東京都「医薬品等の表示について」(医薬品等取扱いの手引 第3章)
  • 東京都健康安全研究センター 薬事監視指導課「2 医薬部外品と医薬品医療機器等法について」
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