鏡を見て、頬やこめかみの茶色い点が前より目につく。ドラッグストアには「シミ対策」をうたうクリームも飲み薬も並んでいて、どれを選べばいいのか、そもそも皮膚科に行くべきなのか、判断がつかない。今回の記事では、そういう状態の40代男性に向けた内容になっています。
先に結論を書くと、選ぶ前に整理しておきたいことが2つあります。ひとつは、「シミ」と呼んでいるものが医学的には一種類ではないこと。もうひとつは、店頭の商品が化粧品・医薬部外品・一般用医薬品という区分に分かれていて、区分ごとに認められている効能が違うことです。この記事では、PMC Labの整理として、①気になる変化や特徴がないかを見る、②商品の区分と効能の範囲を確かめる、③必要なら皮膚科で診断を受ける、という順番で話を進めます。医学的に決まった手順ではなく、市販品を選ぶ前に迷いを減らすための整理です。

顔のシミには、何が関係する?
顔のシミに関わる要因としてよく知られているのは紫外線です。日本皮膚科学会の一般向け解説は、加齢による老化とは別に、紫外線による「光老化」があり、それによってシミやしわが生じること、そして光老化は予防できることを説明しています。環境省の紫外線環境保健マニュアルも、シミと紫外線の関係を取り上げ、紫外線対策を勧めています。
ただ、「40代になったからシミが増える」「男性だからシミができやすい」と単純にまとめることはできません。この記事で取り上げる資料は、年齢や性別でシミの出方がどう違うかを示したものではありません。
もう一つ知っておきたいのは、「シミ」が日常の言葉だという点です。日本皮膚科学会などがまとめた美容医療診療指針では、シミは一般的な用語で、医学的には後天性のメラニン色素沈着症を指すと整理されています。そのうえで、老人性色素斑(日光黒子)と見分けるべき病変として、肝斑、真皮メラノサイトーシス、色素性母斑(いわゆるほくろ)、脂漏性角化症、悪性黒子などを挙げています。
こういった名前を並べると、自分のシミがどれに当たるのか考えたくなるかもしれません。ですが、指針はこれらを医療者が見分ける対象として挙げていて、見分けるのは診察の役割です。この記事でも、病名を当てることを目的にはしていません。「同じシミに見えても中身が違うことがある」と分かっていれば十分です。
市販品を試す前に、皮膚科で相談したいのはどんなとき?
市販品を選ぶ前に、一度立ち止まって見ておきたい点があります。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、皮膚がんの一種であるメラノーマの症状として、ほくろやしみのようなものが大きくなる、色・形・硬さが変わるといった変化を挙げています。日本皮膚科学会の一般向け解説も、ほくろやしみのようなものについて形や色などの観察点を示し、気になる特徴があれば皮膚科専門医の受診を勧めています。
また、市販のトラネキサム酸製剤の添付文書にも、色が黒ずんでいる、色調が均一でない、表面が盛り上がっている、といったしみ状のものがある場合は、皮膚科医に相談するよう書かれています。
以下は、学会・公的資料の記載をもとにPMC Labが整理した、自己判断を続けず皮膚科への相談を考えたい目安です。
- 大きくなってきた、色・形・硬さが変わってきた
- 黒ずみや色むらがある
- 表面が盛り上がっている
- 自分では何なのか見当がつかず、不安が残る
これは病名を判定するためのチェックリストではありません。当てはまる数で「これは○○だ」と決めることはできませんし、当てはまらないから安心とも言えません。あくまで、市販品だけで自己判断を続けないための目安として使ってください。
化粧品・医薬部外品・市販薬は、認められている効能が違う
店頭で「シミ」をうたう商品は、見た目が似ていても制度上の区分が違います。区分ごとに、表示や広告で示せる効能の範囲が決まっています。ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
| 区分 | 認められている効能の範囲(シミに関わるもの) | 根拠となる制度 |
|---|---|---|
| 化粧品 | 「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」 | 厚生労働省の通知(化粧品の効能の範囲) |
| 医薬部外品(薬用化粧品) | 「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」。作用の仕組みによっては「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」 | 厚生労働省の通知(薬用化粧品の効能・効果の範囲) |
| 一般用医薬品(トラネキサム酸製剤の一例) | 「しみ(肝斑に限る)」 | 製品の添付文書 |
化粧品と医薬部外品は「防ぐ」の範囲
化粧品の効能は、厚生労働省の通知で範囲が決められています。シミに関わるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」です。
医薬部外品の一種である薬用化粧品は、厚生労働省の通知で「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」が示され、作用の仕組みによっては「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」も認められるとされています。同じ通知は、効能に付いている限定(「日やけによる」など)を省いて表現しないことも求めています。
化粧品・医薬部外品とも、ここで確認した効能表現は「防ぐ」という範囲で、すでにあるシミを薄くする・消す・治すという効能ではありません。商品を手に取ったら、キャッチコピーより先に、パッケージの区分と効能・効果の表示を見るのが確実です。
一般用医薬品は「肝斑に限る」
一般用医薬品の例として、トラネキサム酸を含む市販薬があります。確認した製品では、効能は「しみ(肝斑に限る)」です。シミ全般が対象ではありません。詳しくは次の見出しで説明します。
店頭で確かめる順番
実際に商品を選ぶときは、次の順番で見ていくと迷いにくくなります。
- 気になる変化がないか:前の見出しで挙げた変化や特徴があるなら、商品選びの前に皮膚科で相談します。
- 区分は何か:化粧品か、医薬部外品か、一般用医薬品か。同じ棚に並んでいても、ここで認められている効能が分かれます。
- 効能・効果の表示に何と書いてあるか:「日やけによる」「肝斑に限る」といった限定まで含めて読みます。限定の部分を読み飛ばすと、商品に期待できる範囲を実際より広く受け取ってしまいます。
- 一般用医薬品なら、添付文書を読む:対象となる症状、服用しないほうがよい人、相談が必要な人、服用期間の上限が書かれています。
広告の言葉は商品ごとに違いますが、区分と効能・効果の表示は、制度で決まった範囲の中で書かれています。比べるときの物差しにするなら、こちらのほうが確かです。
トラネキサム酸の市販薬は、どんなシミが対象?
ここでは、トラネキサム酸製剤の一例(トランシーノEX)の添付文書に書かれている内容を紹介します。製品によって記載が異なる場合があるため、購入するときは実際の製品の添付文書で確認してください。
- 区分は第1類医薬品です
- 効能は「しみ(肝斑に限る)」です
- 服用できるのは成人(15歳以上)で、性別による制限は書かれていません
- 自分のしみが肝斑かどうか見分けるのが難しい場合は、皮膚科医に相談するよう書かれています
- 服用しないほうがよい人、服用前に相談すべき人の条件があります(55歳以上の人、血栓症のある人や起こすおそれのある人、腎臓病のある人など)
- 2か月を超えて服用しないこととされています
- 効果があった場合も、しみが完全に消えるわけではないと書かれています
性別の制限は書かれていませんが、対象はあくまで肝斑です。肝斑かどうかを見た目で判断するのは難しく、添付文書自体が、迷う場合は皮膚科医に相談するよう案内しています。
男性の肝斑について補足しておきます。男性の肝斑を扱った総説では、肝斑は男性にも起こるものの女性より少なく、男性の肝斑についての研究は乏しいとされています。男性に限った効果のデータが十分にあるわけではない、という前提で読んでください。
皮膚科では、治療の前に診断がある
皮膚科では、治療法を決める前に、まず病変が何なのかを診断・鑑別することが重要です。
美容医療診療指針は、シミを見分けるうえで最も問題になるのは悪性腫瘍との区別だとしています。疑いがある場合には、レーザー治療の前に、ダーモスコピー(拡大して皮膚を観察する検査)や生検(組織を一部取って調べる検査)で詳しく調べることを考慮する必要があるとしています。理由として、適切でないレーザー治療を先に行うと、その後の診断が難しくなるおそれがあることを挙げています。
診断がついた後の治療については、同じ指針が、老人性色素斑(日光黒子)に対するレーザーや光治療(IPL)を有効とし、治療を希望する患者には強く推奨するとしています。一方で、長期にわたる検討や、ほかの治療法との比較は十分ではないとも書いています。日本人を含めた有色人種では、炎症後色素沈着や色素脱失などの合併症が起こり得ることにも触れています。
つまり、「レーザーを当てればシミが消える」という話ではありません。どの病変なのか、どの治療が向くのか、どんなリスクがあるのかを、診断を受けたうえで相談する流れになります。
受診の前に、次のことをメモしておくと相談が進めやすくなります。
- いつごろから気になり始めたか
- 大きさや色が変わってきたか
- これまでに使った市販品と、その期間
- 治療を希望するのか、まず何のシミかを知りたいのか
診断を受けたうえで治療を受けるかどうかは、本人が選ぶことです。何のシミかが分かるだけでも、市販品を続けるか、別の方法を考えるかの判断材料になります。
紫外線対策で押さえること
どの区分の商品を使うか、受診するかどうかに関わらず、紫外線対策は光老化対策の基本です。環境省の紫外線環境保健マニュアルが示しているポイントを、要点だけ紹介します。
- SPFとPAを見る:SPFは主にUV-B、PAはUV-Aを防ぐ効果の目安です
- 塗り直す:2〜3時間おきを目安に塗り直すことが勧められています
- 帽子や日傘だけに頼らない:帽子や日傘は直射日光を遮りますが、周囲から散乱してくる紫外線までは防げません
日焼け止めの選び方や、男性が続けやすい使い方については、別の記事で詳しく扱う予定です。
肌の悩みがシミ以外にもある場合は、40代男性の肌は何から整える?乾燥・テカリ・毛穴・赤みを分けて考えるもあわせて読んでみてください。
よくある質問
医薬部外品のシミ対策クリームで、今あるシミは消えますか?
医薬部外品(薬用化粧品)に認められている効能は、「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」や、作用の仕組みによっては「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」という範囲です。今あるシミを消す、薄くするといった効能が認められているわけではありません。
トラネキサム酸の市販薬は、男性も使えますか?
確認した製品の添付文書には、性別による制限は書かれていません。ただし効能は「しみ(肝斑に限る)」で、シミ全般が対象ではありません。肝斑かどうか分からない場合は、皮膚科医に相談してください。年齢や持病によっては、服用前に相談が必要な場合もあります。
シミ取りに保険は使えますか?
保険が使えるかどうかは、病変の種類や治療内容によって異なります。受診する医療機関で確認してください。
皮膚科と美容皮膚科、どちらに行けばいいですか?
この記事では、どちらが適しているかを一律には決められません。どちらを受診する場合も、診断名、治療の選択肢、保険診療か自由診療か、費用の目安を、治療を始める前に確認しておくと判断しやすくなります。
目の下の暗さもシミですか?
目の下が暗く見える原因は、色素だけでなく、血管の透けや影なども関係します。顔のシミとは分けて考えたほうが整理しやすいテーマです。詳しくは40代男性の目の下のクマはなぜ暗く見える?色素・血管・影という3つの要因で整理しています。
まとめ
- 「シミ」に見えるものは一種類ではなく、見分けるのは診察の役割です
- 大きさ・色・形・硬さの変化や、黒ずみ・色むら・盛り上がりが気になるなら、市販品で自己判断を続けず皮膚科で相談してください
- 化粧品と医薬部外品に認められているのは「防ぐ」範囲で、今あるシミを消す効能ではありません
- トラネキサム酸製剤(確認した一例)の効能は「しみ(肝斑に限る)」です
- 皮膚科では、治療の前にまず診断があります
- 紫外線対策は、光老化対策の基本です
出典
日本皮膚科学会ほか5学会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」日本美容外科学会会報 2022;44特別号PDF
トランシーノEX 添付文書情報(第一三共ヘルスケア株式会社)/医薬品医療機器総合機構公式ページ
厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日、薬食発0721第1号)公式ページ
厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日、薬生監麻発0929第5号)PDF
日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「光老化は普通の老化とどう違うのですか?」公式ページ
日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「メラノーマ」Q3公式ページ
国立がん研究センター がん情報サービス「メラノーマ(悪性黒色腫)」公式ページ
環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」PDF
Sarkar R, Ailawadi P, Garg S. Melasma in Men: A Review of Clinical, Etiological, and Management Issues. J Clin Aesthet Dermatol. 2018;11(2):53-59.PubMed