こめかみやもみあげの白髪が目立ってきて、そろそろ染めようかと考え始めた。ドラッグストアで買って自分で染めるか、美容室で頼むか。ネットで調べると「美容室のほうが傷まない」「市販は危ない」といった声も、「市販で十分」という声も出てきて、かえって決めにくくなります。
この記事では、白髪染めの市販と美容室の違いを、どちらがおすすめかではなく、制度上の扱い、薬剤の種類、かぶれやアレルギー、パッチテスト、施術の進め方という順に整理します。根拠には、消費者庁の消費者安全調査委員会がまとめた「毛染めによる皮膚障害」の調査報告書、厚生労働省の通知、国民生活センターと日本ヘアカラー工業会の公開資料を使っています。白髪が増える理由や、黒く戻ることがあるのかについては、40代男性の白髪はなぜ増える?抜くと増えるのか、黒く戻るのかで扱っています。
市販と美容室の白髪染めは、薬剤そのものが違う?
まず押さえておきたいのは、市販の白髪染めと美容室で使う白髪染めが、制度のうえで別のものとして扱われているわけではない、という点です。
消費者安全調査委員会の報告書は、ヘアカラーリング剤には市販用と業務用の2種類があるとしたうえで、これは消費者が店頭で買うか、理美容院で施術を受けるかという流通経路の違いによる分類であり、「成分、品質、安全性等については法令等の制度上の違いはない」と書いています。
つまり、「美容室の薬剤だから強い」「業務用だからやさしい」と、売られている場所だけで言い切ることはできません。違いが出てくるのは、どの製品を選ぶか、誰が塗るか、事前に何を確認するか、といった使い方の部分です。この点は後半で整理します。
白髪染めにはどんな種類がある?
「白髪染め」「おしゃれ染め」は、売り場や広告での呼び方です。制度のうえでは、髪を染める製品は大きく2つに分かれます。
国民生活センターは、ヘアカラーリング製品を、酸化染料などを含む医薬部外品の「染毛剤」と、顔料や染料などを含む化粧品の「染毛料」に大別しています。日本ヘアカラー工業会の分類では、主なものは次のとおりです。
- 酸化染毛剤(医薬部外品):いわゆるヘアカラー、ヘアダイ。白髪染めもおしゃれ染めもここに入ります。酸化染料を含む1剤と、過酸化水素を含む2剤を混ぜて使います。
- 非酸化染毛剤(医薬部外品):オハグロ式と呼ばれる白髪染めです。
- 半永久染毛料(化粧品):ヘアマニキュアや、使い続けるうちに少しずつ染まるカラートリートメントなどです。
- 一時染毛料(化粧品):ヘアマスカラやスプレーなど、シャンプーで落ちるものです。
店頭で見分けるときは、箱に「医薬部外品」や「有効成分」の表示があるかどうかが手がかりになる、と日本ヘアカラー工業会は案内しています。
どの種類にも向き不向きがあり、ここで安全な順に並べることはしません。ただ、次に説明するアレルギーの話は、種類によって性質が異なります。
頭皮のかぶれやアレルギーはどう考える?
白髪染めで気をつけたいのは、主に酸化染毛剤によるアレルギー性のかぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)です。髪が傷むかどうかとは別の問題として考えてください。
消費者安全調査委員会の報告書は、酸化染毛剤について、ヘアカラーリング剤の中で最も広く使われている製品であると同時に、最もアレルギー性接触皮膚炎になりやすい製品だとしています。原因になりやすい成分として、パラフェニレンジアミンなどの酸化染料が挙げられています。
報告書と厚生労働省の通知には、次の点が共通して書かれています。
- これまで毛染めで異常を感じたことのない人でも、続けて染めるうちにアレルギー性接触皮膚炎になることがある
- アレルギーの場合、いったん症状が治まっても、再び使えば発症し、次第に症状が重くなることがある
- 酸化染毛剤を使って、かゆみ、赤み、痛みなどの異常を感じたら、使うのをやめて医療機関を受診する
ヘアマニキュアについては、報告書は、酸化染毛剤と比べるとアレルギー性接触皮膚炎を起こすことは少ないとしています。少ないということであり、起こらないという意味ではありません。
市販品で染めるか美容室で染めるかに関係なく、酸化染毛剤を使うならこのリスクは同じように考える必要があります。
パッチテストは毎回必要?美容室で染める場合は?
酸化染毛剤を使う前には、皮膚アレルギー試験(パッチテスト)を毎回行うことが求められています。
消費者安全調査委員会の報告書によれば、酸化染毛剤の使用説明書には「毎回必ず染毛の48時間前に皮膚アレルギー試験(パッチテスト)をして下さい」という趣旨の注意が記載されています。日本ヘアカラー工業会の案内している手順は、おおよそ次のとおりです。
- 染める2日前(48時間前)に、実際に使う1剤と2剤を少量混ぜてテスト液をつくる
- 腕の内側に10円硬貨くらいの大きさで薄く塗り、自然に乾かす
- 塗ってから30分後くらいと、48時間後の2回、肌の様子を見る
- 塗った部分を絆創膏などで覆わない
- 途中で発疹、赤み、かゆみなどが出たら、すぐに洗い流し、その製品では染めない
報告書は、セルフテスト(パッチテスト)を、自宅で染める場合にも理美容院で染める場合にも、事前にアレルギーが出るかどうかを確かめる唯一の手段だと位置づけています。日本ヘアカラー工業会も、理美容室で染める人に向けて同じ手順を案内し、ヘアカラーの前に理美容師に確認するよう勧めています。美容室で染めるからパッチテストは要らない、ということにはなりません。
一方で、同じ報告書のインターネット調査では、セルフテストを実施したことがない人が7割以上いました。手間がかかることは確かなので、染める日から逆算して準備できるかも、選ぶときの条件の一つになります。
市販と美容室では、「誰が選び、誰が塗るか」も違う
制度上の薬剤の区分だけでは市販と美容室を分けられないため、選ぶときは施術の進め方も見ておきたいところです。
市販品で自分で染める場合
- 製品の種類と色を、自分で選ぶ
- パッチテストも、塗るのも、流すのも自分で行う
- 使用説明書を読み、注意事項を自分で確認する
美容室で染める場合
- 日本ヘアカラー工業会は、理美容師に対して、過去にヘアカラーで異常を感じた経験や当日の体調などを確認すること、ヘアカラーのリスクとパッチテストの必要性を説明すること、ヘアカラーが適さない人にはヘアマニキュアなど別の方法を提案することを求めています
- 薬剤や色は、相談しながら美容師が選ぶ
- 塗布は美容師が行う
美容室で染める場合にも、本人が伝えなければ分からないことがあります。日本ヘアカラー工業会は、施術中にしみる、チクチクするなどの異常を感じたらすぐに申し出ること、ヘアカラーによるアレルギー反応は帰宅後に出ることがほとんどなので、体調に変化があれば理美容師に連絡することを案内しています。
どちらが安全か、どちらがきれいに仕上がるかを一般的に比べた資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。考えたいのは、選ぶ・確認する・塗るという作業を、自分でやるか、美容師に任せるか、という点です。
自分で染めるなら、どこまで自分で確認する?
ここからは、PMC Lab編集部が、自分で染める前に確かめておきたいと考える実用上の項目です。医学的な根拠にもとづく基準ではありません。
- 塗る範囲:短髪でも、生え際、もみあげ、えり足は自分では見えにくい。鏡を使って塗れるか
- 塗る量と時間:使用説明書の量や放置時間を、そのとおりに守れるか
- パッチテスト:染める48時間前にテストをして、結果を待ってから染める段取りが組めるか
- 使用上の注意:製品の使用説明と注意事項を読み、守れるか
- 後片付け:肌や衣類、浴室についた薬剤の扱い
どの範囲を自分で塗れるかは、髪型や白髪の場所によって人それぞれです。短く刈り上げた髪型では、生え際やもみあげ、えり足の仕上がりが目に入りやすいことも考えておきたいところです。
費用と染め直しの手間は、どう考える?
費用は、市販品の価格、美容室の料金、髪の長さ、施術の内容によって大きく変わります。市販と美容室の費用を全国的に比べた統計は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。そのため、この記事では金額の比較はしません。購入前、予約前に、それぞれの価格を確認してください。
染め直しの間隔についても、何週間ごとが目安と一般化できる根拠は見つかりませんでした。白髪の伸び方、白髪の量、どこまで目立たなくしたいかによって変わります。
日本ヘアカラー工業会は、色持ちの目安として、酸化染毛剤は2〜3か月、ヘアマニキュアは約2〜4週間としています。ただ、これは染めた色がどのくらい残るかの目安で、根元に新しく白髪が伸びてくるまでの期間とは別のものです。
時間の面では、自分で染める場合はパッチテストの48時間と、塗って流す作業の時間が必要です。美容室の場合は、予約と移動、施術の時間がかかります。どちらが自分の生活に合うかで考えるのが現実的です。
選ぶ前に確認したい項目
ここまでの内容をもとに、PMC Lab編集部が選ぶ前に確認したい項目を整理しました。国や業界団体が定めたチェックリストではありません。
| 確認すること | 見るところ |
|---|---|
| 1. 製品の種類 | 医薬部外品の染毛剤か、化粧品の染毛料か |
| 2. パッチテスト | 毎回、染める48時間前に実施できるか |
| 3. 過去の異常 | これまでヘアカラーでかぶれたり、気分が悪くなったりしたことがないか |
| 4. 誰が選ぶか | 製品と色を自分で選ぶか、美容師と相談して決めるか |
| 5. 誰が塗るか | 生え際やもみあげを自分で塗れるか、任せたいか |
| 6. 費用 | 製品の価格、美容室の料金を事前に確認したか |
| 7. 続ける手間 | 染め直しのたびに必要な時間と段取りを続けられるか |
よくある質問
一度問題なく染められたら、次回も大丈夫ですか?
そうとは言えません。消費者安全調査委員会の報告書は、初回のセルフテストで反応がなかったとしても、繰り返し毛染めをするうちにアレルギーが出るようになることがあるとしています。日本ヘアカラー工業会も、過去に何回も異常なく染めていた人でも体質の変化でかぶれるようになる場合があるとして、毎回のパッチテストを求めています。
ヘアマニキュアなら、アレルギーは起きませんか?
起きないとは言えません。消費者安全調査委員会の報告書は、ヘアマニキュアについて、酸化染毛剤と比較するとアレルギー性接触皮膚炎を引き起こすことは少ないとしています。ただし、起きないとは書かれていません。ヘアマニキュアを使う場合も製品の注意書きを確認し、異常を感じたら使用をやめてください。
白髪染めで薄毛になりますか?
白髪のある韓国の620人を調べた研究では、髪を染めていることと、脱毛や頭皮の病気の多さとの間に関連は見られませんでした。ただし、これはある時点で聞き取りと診察をした調査で、安全性を確かめるための試験ではありません。この結果だけで「染めても薄毛にならない」と言い切ることはできません。
どのくらいの頻度で染めればいいですか?
何週間ごとが目安と一般化できる根拠は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。白髪の伸び方や量、どこまで目立たなくしたいかで変わります。染める回数が増えれば、酸化染毛剤に触れる回数も増えます。厚生労働省の通知は、酸化染毛剤との接触回数が増えるとアレルギーになるリスクが高まる可能性があるとしています。
美容室なら、パッチテストは必要ありませんか?
必要ないとは言えません。消費者安全調査委員会の報告書は、パッチテストを自宅でも理美容院でも染める前にアレルギーが出るかを確かめる唯一の手段としています。日本ヘアカラー工業会も、理美容室で染める人に向けて、毎回、染める48時間前からのパッチテストを案内しています。予約の際に、美容室での対応を確認しておくと安心です。
まとめ
白髪染めの市販と美容室の違いを整理すると、次のようになります。
- 市販用と業務用は流通経路による分類で、成分・品質・安全性等について制度上の違いはないとされている
- 制度上は、医薬部外品の「染毛剤」と化粧品の「染毛料」に分かれる。いわゆるヘアカラーは、染毛剤のうちの酸化染毛剤
- 酸化染毛剤は、これまで問題がなかった人でもアレルギー性のかぶれを起こすことがある
- パッチテストは、市販でも美容室でも、毎回、染める48時間前に行う
- 製品や色を誰が選び、誰が塗り、誰が確認するかも、市販と美容室で違う
- 費用と染め直しの間隔は一般化できないので、自分の条件で確認する
出典
消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書 毛染めによる皮膚障害」(平成27年10月23日) PDF
厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長通知「染毛剤、脱色剤及び脱染剤の使用上の注意について(製造販売業者への注意喚起及び周知徹底依頼)」薬生安発1023第1号(平成27年10月23日) PDF
国民生活センター「くらしの危険 No.392」(2026年7月) PDF
日本ヘアカラー工業会「ヘアカラーリング製品の特徴を理解しましょう」 公式ページ
日本ヘアカラー工業会「皮膚アレルギー試験(パッチテスト)について」 公式ページ
日本ヘアカラー工業会「理美容師の皆さまへのお願い」 公式ページ
日本ヘアカラー工業会「ヘアカラーの施術を受ける際、注意しましょう」 公式ページ
Jo SJ, Paik SH, Choi JW, et al. The pattern of hair dyeing in Koreans with gray hair. Ann Dermatol. 2013;25(4):401-404. PubMed