AGA治療を始めようと調べると、オンライン診療の案内がいくつも出てきます。スマートフォンで受けられて、薬は自宅に届く。便利そうに見える一方で、対面のクリニックと何が違うのか、安さや手軽さだけで決めてよいのか、迷う人も多いはずです。
「どちらが優れているか」を考える前に、知っておきたいことがあります。オンライン診療には国の指針があり、初診の進め方、本人確認、診察の方法、処方できる範囲、対面への切り替えについて、守るべきルールが決められています。この記事では、そのルールを読み手の目線で整理し、申し込む前に確かめておきたい項目をまとめます。
先にお伝えしておくと、今回確認した範囲では、AGA治療についてオンライン診療と対面診療の治療成績を直接比較した研究は確認できませんでした。そのため、この記事ではどちらかをおすすめすることはしません。
なお、AGA治療に進むかどうか自体をまだ迷っている段階なら、先に30代の薄毛は何から始める?育毛剤・発毛剤・AGA治療の選び方を読んでみてください。
オンライン診療と対面診療は、何が違う?
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、医療法の定義を引用し、オンライン診療を、映像と音声の送受信によって医師と離れた場所にいる患者が互いの状態を確認しながら話せる方法で行う診療、と位置づけています。
一方で、同じ指針は、オンライン診療では触診などができないため、得られる情報が限られることも明記しています。そのうえで、対面診療を組み合わせる必要があること、オンライン診療を行うたびに医師が実施できるかどうかを判断することを示しています。
ここで言えるのは、「オンラインと対面は、診察で使える情報の種類が違う」ということまでです。オンラインが劣っている、あるいは対面と同じだ、という意味ではありません。
AGAの診断について、日本皮膚科学会の診療ガイドラインは、問診で家族歴や脱毛の経過を聞き、視診で生え際の後退や毛髪の変化を確認して行うとしています。拡大鏡やダーモスコピーも診断の助けになるとされています。どの方法で、どこまで確認するかは、診療の中で医師が決めることです。
初診からオンライン診療を受けられる?
条件によっては受けられます。ただし、誰でもすぐに受けられるわけではありません。
国の指針が示す初診の考え方は、次の順番になっています。
- 原則は「かかりつけの医師」が行う。 日頃から対面で診療を受けているなど、すでに関係のある医師です。
- かかりつけの医師以外でも、行える場合がある。 既往歴、服薬歴、アレルギー歴などを、過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、お薬手帳などから把握でき、患者の症状とあわせて医師が可能と判断した場合です。
- 1・2のどちらにも当たらない場合は、「診療前相談」を行う。 医師が映像を使ってリアルタイムで症状や医学的情報を確認し、医師と患者の双方がオンラインで診療できると判断して合意したときに、オンライン診療に進みます。
初めてかかる医療機関だから必ず診療前相談になる、というわけではありません。必要な医学的情報を把握できるかどうかと、医師の判断によって進み方が変わります。
知っておきたい点が2つあります。
- 診療前相談は、診断や処方ではありません。 診療に進めるかどうかを確かめる段階です。
- 診療前相談の結果、オンライン診療に進めないこともあります。 対面での受診が必要と判断された場合は、対面診療につなぐこととされています。指針は、こうした可能性や診療前相談の費用などを、医療機関があらかじめホームページなどで周知するよう求めています。
オンライン診療では、本人確認と診察をどう行う?
本人確認
指針は、緊急時などやむを得ない場合を除き、原則として医師と患者の双方が身分確認書類を使って、互いに本人であることを確認するとしています。申し込みの際は、どの書類を使うのかを確認しておくと手続きが進めやすくなります。
映像と音声で診察する
指針は、オンライン診療ではリアルタイムの映像と音声を使うこととし、文字、写真、録画動画のやりとりだけで完結してはならないとしています。そのうえで、対面診療に代わり得る程度の有用な情報が得られる場合には、補助的な手段として画像や文字のやりとりを使うことは妨げないとしています。
「写真を送るだけで診てもらえるのか」と気になっている人もいるかもしれません。国の指針が示すオンライン診療は、医師と映像・音声でやりとりする診療です。申し込む前に、医師とどの段階で、どのような形で話すのかを確認しておくと安心です。
初診では、薬をどこまで処方できる?
指針は、初診の場合に次の処方を行わないとしています。
- 麻薬と向精神薬
- 基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬
- 基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する、8日分以上の処方
3つ目は誤解されやすいところです。この制限は、基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対するもので、オンライン初診の処方がすべて8日分未満になる、という決まりではありません。情報が把握できているかどうかは、医師が判断します。
AGA治療で使われる内服薬のうち、フィナステリド(プロペシア)とデュタステリド(ザガーロ)は、どちらも添付文書で処方箋医薬品とされ、医師等の処方箋によって使う薬です。ザガーロの添付文書は、女性、小児等、重度の肝機能障害のある人などへの投与を禁忌としています。
指針は、初診や新たな疾患で薬を処方するときは、関係学会のガイドラインなどを参考にするとしています。どの薬を、どのくらいの期間処方するかは、オンラインでも対面でも、患者の状態を確認したうえで医師が決めることです。
オンラインと対面で、治療効果は違う?
今回確認した範囲では、AGA治療についてオンライン診療と対面診療の治療成績を直接比較した研究は確認できませんでした。
そのため、「オンラインの方が効果が低い」「対面の方が効果が高い」「どちらも同じ効果」のいずれも、この記事では言えません。
ここで分けて考えたいのは、薬の根拠と、診療形式の根拠です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、フィナステリドの内服、デュタステリドの内服、ミノキシジルの外用が推奨度Aとされています。これは薬そのものについての評価です。その薬をオンライン診療で処方された場合と対面診療で処方された場合で結果が違うかどうかは、今回確認した範囲では、比べた研究が見当たらなかった、ということになります。
どんなときに対面診療へ切り替わる?
オンライン診療を始めた後でも、対面診療に切り替わることがあります。指針が示しているのは次のような場合です。
- オンライン診療を行うたびに医師が実施できるかを判断し、十分な情報が得られていないと判断したとき
- オンライン診療の実施が望ましくないと判断されるとき
- 急病や急変のとき(原則として対面で診療する)
ガイドラインは、AGAの診療では円形脱毛症の一部、全身の病気に伴う脱毛、貧血や急激なダイエットに伴う脱毛、薬剤による脱毛などを除外することが大切だとしています。こうした確認の中で、医師が対面での診察が必要と判断することもあり得ます。
対面が必要になった場合については、かかりつけの医師への紹介、オンライン診療を行った医師による対面診療、近くの医療機関への紹介などが想定されています。自分がどちらに向いているかをこの記事で決めることはできませんが、切り替わる可能性があることは、あらかじめ知っておきたいところです。
診療で医師が何を確認するのかは、男性型脱毛症の診療では何を確認する?受診前に整理できることにまとめています。
申し込む前に、何を確認する?
ここまでの内容をもとに、PMC Lab編集部が、申し込む前に確認しておきたい項目を整理しました。国が定めたチェックリストではなく、指針やガイドライン、添付文書の記載から当サイトがまとめたものです。オンラインでも対面でも、同じ項目で比べることができます。

| 確認すること | 見ておきたい点 |
|---|---|
| 1. 初診の進み方 | 初診からオンラインか、最初は対面か |
| 2. 診療前相談の有無 | 診療前相談があるか。オンライン診療に進めなかった場合の扱い |
| 3. 本人確認 | どの身分確認書類を使うか |
| 4. 診察の方法 | 医師と映像・音声で話す場面があるか |
| 5. 初回の処方 | 処方の条件や日数がどう説明されているか |
| 6. 対面が必要になったとき | 同じ医療機関で受けられるか、どこを紹介されるか |
| 7. 費用の内訳 | 診察料、薬代、配送料、検査、診療前相談などがそれぞれいくらか |
| 8. AGA以外の脱毛の確認 | 円形脱毛症や体調による抜け毛などの可能性を、どのように確認するか |
表の1〜4は、この記事の前半で見た指針のルールにそのまま対応しています。初診の進み方と診療前相談は、オンラインで診療に進めるかどうかに関わります。本人確認と診察の方法は、オンライン診療として行われる診療の基本的な形です。申し込みページなどで説明されていれば、先に読んでおくと当日の流れが想像しやすくなります。
5の初回の処方は、指針の処方制限と関わる項目です。初回にどのくらいの期間の薬が出るのかは、医療機関の運用や医師の判断によって変わり得ます。説明がない場合は、診療の中で医師に尋ねてかまいません。
6は、対面への切り替えに備える項目です。オンライン診療は、医師が必要と判断すれば対面に切り替わります。そのとき慌てないように、どこで受診することになるのかを知っておくと安心です。
7は、費用の条件をそろえて比べるための項目です。詳しくは次の見出しで説明します。
8は、診療の中で何が確認されるのかを見るための項目です。抜け毛にはAGA以外の原因もあり、ガイドラインはそれらを除外することが大切だとしています。その確認をどのように行うのかを、申し込む前に聞いておくと判断材料になります。
費用は「月額」だけで比べない
「オンラインの方が安い」と感じる広告を目にすることがありますが、受診形式だけで費用の高い・安いを一般化することはできません。比べるときは、月額の表示だけでなく、何が含まれていて何が別料金なのかを見ることが大切です。
参考までに、ザガーロの添付文書には「本剤は保険給付の対象とならない」と書かれています。指針も、診療前相談の費用などをあらかじめ周知するよう医療機関に求めています。費用の説明が事前に示されているかどうかも、確認項目のひとつになります。
よくある質問
オンライン診療は写真だけで受けられますか?
国の指針では、オンライン診療はリアルタイムの映像と音声を使うこととされ、文字、写真、録画動画のやりとりだけで完結してはならないとされています。対面診療に代わり得る程度の有用な情報が得られる場合に、補助的に画像などを使うことは妨げないとされています。
初めての医療機関でも、初診からオンラインで受けられますか?
条件によっては可能です。指針では、初診からのオンライン診療は原則としてかかりつけの医師が行うとされています。かかりつけの医師以外でも、診療録やお薬手帳、健康診断の結果などから必要な医学的情報を把握でき、医師が可能と判断した場合は行えます。どちらにも当たらない場合は、診療前相談で症状や医学的情報を確認し、医師と患者の双方が可能と判断して合意したときに進みます。結果として対面での受診を勧められることもあります。
オンライン診療の方が安いのですか?
一概には言えません。医療機関ごとに費用の内訳が違うため、診察料、薬代、配送料、検査、診療前相談などを含めた総額で確認してください。
血液検査は必要ですか?
今回確認した資料からは、一律に必要とも不要とも言えません。検査を行うかどうか、費用に含まれるかどうかは、受診する医療機関に確認してください。
ミノキシジルの飲み薬はどう扱われていますか?
日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)では、ミノキシジルの内服は推奨度D(行うべきではない)とされています。外用(塗り薬)とは評価が異なります。
まとめ
- オンライン診療は、映像と音声で行う診療です。触診などができないため、得られる情報には限りがあります
- 初診からのオンライン診療には条件があり、場合によっては診療前相談を経ます
- 文字や写真だけで完結する診療ではありません
- 初診での処方には制限があり、とくに8日分の制限は基礎疾患などの情報が把握できていない場合のものです
- 医師が必要と判断すれば、対面診療に切り替わります
- AGA治療で、オンラインと対面の治療成績を直接比べた研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした
- 申し込む前に、診察の方法、処方の条件、対面が必要になったときの受診先、費用の内訳を確認しておきましょう
薄毛が気になったとき、自分で確認できる範囲と医師に確認する範囲を整理したい場合は、PMC Decision:薄毛が気になったら何から確認する?も使ってみてください。
出典
厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」平成30年3月(令和8年4月改訂)PDF
日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」PDF
プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg 添付文書(医薬品医療機器総合機構)PDF
ザガーロカプセル0.1mg/ザガーロカプセル0.5mg 添付文書(医薬品医療機器総合機構)公式ページ