T字カミソリから電気シェーバーに替えようと決めて売り場やECサイトを見ると、最初に分かれ道になるのが「回転式」と「往復式」です。比較記事をいくつか読むと、「敏感肌なら回転式」「ヒゲが濃いなら往復式」といった振り分けがよく出てきます。
ただ、その振り分けがどこまで確かめられているのかは、あまり書かれていません。今回の記事では、研究とメーカーの公式情報を確認し、両方式の構造と動かし方の違い、肌への影響について分かっていることと分かっていないことを分けて整理します。そのうえで、自分に合うほうを決めるために、試すときに何を見ればよいかをまとめてみました。
T字カミソリと電気シェーバーのどちらにするかで迷っている段階なら、先にT字カミソリと電気シェーバーの比べ方をご覧ください。ここでは、電気シェーバーにすると決めた後の話をします。
回転式と往復式は、何が違う?
違いは大きく二つあります。刃の動き方と、本体の動かし方です。
回転式:円形の刃が回る
回転式の代表的なメーカーであるフィリップスは、3つの円盤型のヘッドの内部で円形の刃が回転してヒゲを切る、と説明しています。刃は時計回りに回るので、本体はその逆の反時計回りに、小さな円を描くようにゆっくり動かすよう案内しています。
往復式:外刃の下で内刃が往復する
往復式は、ヒゲを切る内刃に、網目のある外刃をかぶせた構造です。パナソニックの説明では、外刃の網目が肌を押してヒゲの根元を押し出し、その下で内刃が切ります。同社のラムダッシュ5枚刃(ES-CV70)の場合、リニアモーターが内刃を直接動かし、内刃は1分間に約14,000回往復します(同社の5枚刃についての値)。
動かし方も回転式とは違います。パナソニックは、肌に対して直角に刃を軽く当て、ヒゲの流れと逆向きにゆっくり動かすよう案内しています。
| 回転式 | 往復式 | |
|---|---|---|
| 刃の動き | 円盤型ヘッドの中で円形の刃が回転する | 外刃の下で内刃が往復する |
| 本体の動かし方(メーカーの案内) | 小さな円を描くようにゆっくり | 肌に直角に軽く当て、ヒゲの流れと逆向きにゆっくり |

同じ方式でも、ヘッドの数や刃の枚数、ヘッドが動くかどうかは機種によって違います。ここで書いているのは方式の基本的な仕組みで、個々の製品の性能ではありません。
どちらが肌にやさしいかは、分かっている?
医学・皮膚科学の論文データベースなどを調べた範囲では、回転式と往復式の肌への影響を直接比べたヒト研究は確認できませんでした。赤み、ヒリつき、切り傷、皮膚のバリア機能のどれについても、同じ条件で両方式を比べた結果は見つかっていません。
ただ、研究が全くないとまでは言えません。メーカーの社内で比較していても、論文として公開されていなければ外からは確かめられないからです。
それでも、読者が確かめられる形の根拠が見当たらない以上、「回転式のほうが肌にやさしい」「往復式のほうが荒れにくい」と、方式だけで結論を出すことはできません。比較記事でよく見る振り分けも、同じ理由で、それだけを判断基準にするのは難しいでしょう。
では何を手がかりにすればよいのか?研究で手がかりが得られているのは、どちらの方式にも共通する「当て方」の部分です。
肌への負担には、使い方がどう関係する?
男性のヒゲと顔の皮膚についてまとめた総説(Maurerら、2016年)は、ヒゲは太く硬く、生え方もそろっていないため剃りにくいと整理しています。そのため強く押し当てたり、同じ所を何度もなぞったりしがちで、それが剃った後の刺激を起こりやすく、また強くするとしています。この記述はカミソリと電気シェーバーの両方を対象にしたもので、回転式と往復式を分けてはいません。なお、著者にはProcter & GambleのBraun研究拠点の所属者が含まれます。
電気シェーバーを強く押し当てたときの肌の変化を、機器で測った研究もあります。Chaturvediら(2024年)は、24〜41歳の健康な男性10名に、市販のフィリップスS9000シリーズの本体に研究用の試作ヘッドを付けたシェーバーで、高い圧をかけて前腕・頬・首を60秒ずつ剃ってもらいました。試作ヘッドは肌との摩擦が大きくなるように作られたもので、回転式か網刃式かは論文に書かれていません。
剃った20分後、頬と首では、肌から蒸発する水分の量(皮膚のバリア機能の目安)と、皮膚の浅いところの血管の密度が増え、変化は首でより大きくみられました。24時間後には、多くの指標がほぼ元の値に戻っています。
対象は10名と少なく、圧も摩擦も意図的に強めた条件で、ふだんの剃り方を再現したものではありません。この研究から分かるのは、強く押し当てた条件では首で一時的な変化が大きく出た、というところまでです。特定の方式が首に向かないという意味ではありません。
メーカーも、方式を問わず強く押し当てないよう案内しています。フィリップスは回転式について、強く押し当てると肌への刺激が増すおそれがあるとし、首などで同じ箇所を何度も繰り返し剃らないよう勧めています。パナソニックも往復式について、あまり強く当てると肌を傷つける原因になるとしています。
剃った後の赤みが気になるなら、方式を替えるかどうかとは別に、当てる強さとなぞる回数を一度見直してみてください。
ヒゲが濃い人や、首・鼻の下が剃りにくい人はどちら?
ヒゲの濃さや太さ、あご下・首・鼻の下といった部位ごとに、回転式と往復式のどちらがよく剃れるか、どちらが肌への負担が少ないかを比べた研究は確認できませんでした。濃さや部位だけで方式を決める根拠は、今のところ見当たりません。
その代わり、剃りにくい場所の扱い方は、各メーカーがそれぞれの方式について案内しています。
- 回転式(フィリップスの案内):小さな円を描くようにゆっくり動かす。あご先やあごのラインは、肌を軽く伸ばしながら剃る。鼻の下も、指で肌を引っ張ってヒゲを立たせながら小さな円で。首などでは同じ箇所を何度も繰り返さない。長く伸びたヒゲは、先にトリミングしてから剃る。
- 往復式(パナソニックの案内):肌に直角に軽く当て、ヒゲの流れと逆向きにゆっくり動かす。速く動かすとヒゲが外刃の穴に入らない。あご下のように寝ているヒゲは、空いている手で肌を伸ばして立たせる。
二つの方式で動かし方は違いますが、肌を張ってヒゲを立たせること、ゆっくり動かすこと、軽く当てることは共通しています。剃り残しが多いと感じたら、方式を比べる前に、こうした動かし方ができているかを確かめておくと、比較の条件がそろいます。
ここで紹介した動かし方は、各メーカーが自社の電気シェーバー向けに案内しているものです。カミソリで剃るときの手順とは別物なので、そのまま当てはめないでください。カミソリの剃り方は髭剃りの肌荒れ対策で整理しています。
自分で比べるなら、何を見る?
ここからは研究の結果ではなく、PMC Lab編集部からの提案です。直接比べたデータが見当たらない以上、最終的には自分の肌とヒゲで確かめるほかありません。そのときは、条件をそろえて比べることをおすすめします。
見る場所は、あご下・首・鼻の下など、自分がふだん剃りにくいと感じている場所に絞ると比べやすくなります。
| 見ること | いつ見るか |
|---|---|
| 剃り残し(指でなでて引っかかるか) | 剃った直後 |
| 赤み・ヒリつき | 剃った直後 |
| 赤み・ブツブツ | 数時間後 |
| 剃り終わるまでの時間 | 毎回 |
| あご下・首・鼻の下へのヘッドの当てやすさ | 毎回 |
| 持ちやすさ、手の疲れ | 毎回 |
そろえておきたい条件は、剃る時間帯(朝なら朝)、剃る前の肌の状態(乾いた肌か、洗顔の後か)、当てる強さ、の三つです。PMC Labでは、1回だけで決めず、同じ条件で何回か剃って記録し、比べる方法を提案します。
期間を考えるうえでは、フィリップスが、カミソリから電気シェーバーに替えた場合、肌が慣れるまで約2〜3週間かかることがあると案内している点も参考になります。PMC Labが初日の印象だけで決めない方法を提案しているのは、このためです。
店頭で実機に触れられるなら、本体を持ってあご下や首に当てる角度を作れるか、手になじむかを確かめられます。
水洗いできるか、洗浄機があるか、替刃の価格と交換時期、1年あたりの費用は、T字カミソリと電気シェーバーの比べ方の「電気シェーバーを選ぶときに見るところ」で整理しています。方式に関係なく比べられる項目なので、候補が2〜3機種に絞れたら、あわせて確認してください。
方式を替えても肌荒れが続くときは?
回転式から往復式へ、あるいはその逆へ替えても赤みやブツブツが続くなら、方式以外のところに原因がある可能性も考えます。
- 剃り方を見直す:当て方、剃る頻度、剃る前後の準備。→ 髭剃りの肌荒れ対策|何から変える?
- いま荒れている肌を落ち着かせる:症状別の手当てと、皮膚科を考える目安。→ 髭剃り後の肌荒れ、今日どうする?
- 剃る回数そのものを減らす:ヒゲ脱毛を検討する前に確かめたいこと。→ ヒゲ脱毛を始める前に確かめる4つのこと。剃り続けるか減らすかで迷っているなら、2つの質問で確かめることもできます。
ここまでのまとめ
- 回転式は円形の刃が回り、小さな円を描くように動かす。往復式は外刃の下で内刃が往復し、肌に直角に軽く当ててヒゲの流れと逆向きにゆっくり動かす。構造も動かし方も違う
- どちらが肌にやさしいかを直接比べたヒト研究は、調べた範囲では確認できなかった
- 強く押し当てることと、同じ所を何度もなぞることは、方式を問わず避けたい
- ヒゲの濃さや部位だけで方式を決める根拠も確認できなかった
- 自分で比べるなら、時間帯・肌の状態・当てる強さをそろえ、何回か記録して見る(PMC Labの提案)
- 方式を替えても荒れが続くなら、剃り方や剃る回数など、方式以外も見直す
よくある質問
回転式でうまく剃れないのはなぜ?
動かし方が往復式やカミソリの感覚のままになっていないかを確かめてください。フィリップスは、直線的にではなく、小さくゆっくり円を描くように動かし、刃の回転と逆の反時計回りに動かすよう案内しています。あご先やあごのラインは肌を軽く伸ばしながら、長く伸びたヒゲは先にトリミングしてから剃るとしています。強く押し当てても深く剃れるとは限らず、刺激が増すおそれがある点にも注意してください。
電気シェーバーに替えた直後に赤くなるのは普通?
フィリップスは、カミソリから電気シェーバーに替えた場合、肌が慣れるまで約2〜3週間かかることがあると案内しています。ただし、このメーカー案内だけを根拠に、替えた直後の赤みやヒリつきを「正常」と判断することはできません。その間も、強く押し当てない、同じ所を何度もなぞらない、を守ってください。赤みが強い、痛む、ブツブツが増えていくといった場合は、髭剃り後の肌荒れ、今日どうする?で手当てと受診の目安を確認してください。
首だけ荒れるときはどう考える?
強い圧をかけた条件の研究(Chaturvediら、2024年、10名)では、頬より首で、剃った直後の変化が大きく出ました。ふだんの使い方での結果ではありませんが、首は特に、押し当てる強さと、同じ所を繰り返し剃っていないかを見直す場所です。フィリップスも、首などで同じ箇所を何度も剃らないよう勧めています。見直しても続く場合は、髭剃りの肌荒れ対策で症状ごとの選択肢を確認してください。
深剃りできる方式はどっち?
方式だけで深剃りの性能を一般化できる根拠は、確認できていません。回転式と往復式の剃り残しを同じ条件で比べた研究は、調べた範囲では見当たりませんでした。また、深く剃っても、皮膚の下に残ったヒゲが透けて青く見えることがあります。その仕組みは青ヒゲはなぜ剃っても消えない?で解説しています。
出典
このページは、次の2件の論文と、メーカー5件の公式情報をもとにしています。論文の著者に企業の所属者が含まれるものは、その旨を添えました。メーカーの情報は、構造と使い方の説明にだけ用いています。
Maurer M, Rietzler M, Burghardt R, Siebenhaar F. The male beard hair and facial skin – challenges for shaving. Int J Cosmet Sci. 2016;38 Suppl 1:3-9.(総説/著者にProcter & GambleのBraun研究拠点の所属者を含む)DOI 10.1111/ics.12328
Chaturvedi P, Kroon W, Zanelli G, Worsley PR. An exploratory study of structural and microvascular changes in the skin following electrical shaving using optical coherence topography. Skin Res Technol. 2024;30(7):e13830.(健康な男性10名・研究用の試作ヘッド/著者にPhilips Consumer Lifestyleの所属者を含む)DOI 10.1111/srt.13830
フィリップス「回転式シェーバーとは?: 初心者のための回転式シェーバー剃り方ガイド」公式ページ
フィリップス サポート「フィリップスシェーバーで肌への刺激を抑えながら深剃りできますか?」公式ページ
パナソニック「T字カミソリ派必見!肌にやさしいのに深剃り、電気シェーバーの仕組み!」公式ページ
パナソニック「リニアシェーバー ラムダッシュ 5枚刃 ES-CV70」公式ページ
パナソニック「髭の上手な剃り方(DRY剃り)」公式ページ
本記事は一般的な情報の整理で、医療上の判断に代わるものではありません。製品の仕様は変わることがあるため、購入の前に各公式サイトで確認してください。